HISTORY 競技
日本オープンゴルフ選手権競技
1927年、第1回大会の優勝者は
アマチュアの赤星六郎
創立3年目を迎えた1926(大正15)年、JGAは9月24日に程ヶ谷カントリー倶楽部で開かれた総会において翌年度の事業計画を決議した。その中に5月28、29日に程ヶ谷で72ホールメダルプレー(ストロークプレー)の日本オープンゴルフ選手権競技を開催することが含まれていた。
当時、世界では1860年に始まった全英オープンをはじめ、フランスやドイツ、オランダなどの欧州各国に米国やカナダ、オーストラリア、南アフリカ、さらにはアジアのフィリピンでもプロ、アマチュア問わずその国の№1プレーヤーを争うナショナルオープンと呼ばれる競技が行われていた。
六甲山に日本で初めてのゴルフ場ができてから四半世紀。日本でもついにナショナルオープンが始まることになったのだ。
1927(昭和2)年に実施された第1回日本オープンゴルフ選手権競技の出場資格はアマチュアが「ナショナルハンディキャップ8以内」、プロが「所属クラブのオナラリー・セクレタリー(名誉書記)に推薦された者」だった。出場資格は時代とともに変遷し、2024年大会では「2024年日本アマチュアゴルフ選手権優勝者」「2023年ジャパンゴルフツアー賞金ランキング上位40位」「2024年日本オープン選手権最終予選(2会場)通過者」「2024年各地区連盟主催 北海道オープン、中部オープン、関西オープン、中四国オープン、九州オープン各選手権の優勝者」など16項目にのぼり、出場枠は120人だった。
第1回大会に参加したのはアマチュア12人、プロ5人の計17人。日本で誕生して間もなかったプロを指導していたアマチュアの赤星六郎が、プロの浅見緑蔵に10打差をつけて圧勝した。
第2回大会は19歳のプロ、浅見緑蔵が
今も残る大会最年少記録で優勝
第2回大会からはプロが台頭する。2代目チャンピオンとなったのは19歳の浅見。今なお大会最年少優勝記録として残っている。
第3回、第4回大会は宮本留吉が連覇し、第5回大会では浅見が2勝目を挙げた。第5回大会までの優勝者のストローク数を見ると309、301、298、287、281と飛躍的に向上している。日本のプレーヤー、特にプロの成長が著しかったことがわかる。
第2回大会の優勝者・浅見緑蔵
1932(昭和7)年の第6回大会で出場者が50人を超えた。この年までは1日36ホールの2日間で開催されていたが、第7回大会からは初日、2日目が18ホール、最終日が36ホールの3日間競技に変更された(戦後復興直後は2日間で開催)。第9回大会ではカットラインが36ホール終了時の首位とのストローク差(19打以内)から40位タイまでと順位に改められている。
1940(昭和15)年の第13回大会で宮本が前年覇者・戸田藤一郎との優勝争いを制して通算6勝目を挙げた。これが大会最多勝記録として今も輝いている。
大会は戦争の影響で1942(昭和17)年から8年間、開催されなかった。戦後、再開されたのは1950(昭和25)年。出場したアマチュアの中にはGHQ(連合国軍総司令部)所属の選手もいた。
1959(昭和34)年には第24回大会にして初めてプレーオフにもつれこんだ。当時は第4ラウンド翌日に18ホールストロークプレーで争われ、陳清波が島村祐正を73-78で下している。翌日18ホールのプレーオフが実施されたのはこの年だけ。その後は即日実施されることになり、3ホール合計ストロークの時代を経て、現行のサドンデス方式となった。
1963(昭和38)年には戸田藤一郎が連覇を狙った杉原輝雄らとの戦いを制して24年ぶりの大会2勝目を挙げ、48歳の大会最年長優勝記録を樹立した。
現在と同じ1日18ホールの4日間競技となったのは1971(昭和46)年からである。ただし、開催曜日は火曜日から金曜日とすべて平日だった。当時は平日開催が基本だったのだ。現在のように日曜日が最終日になったのは翌1972(昭和47)年である。この年は他にも観客の入場を有料化し、NHKのテレビ中継がスタートするなど、現在の形に大きく近づいた節目の大会だった。
日本オープン優勝をきっかけとして
世界に羽ばたいたセベ・バレステロス
日本オープンゴルフ選手権競技には海外から大物選手が参戦してきた歴史がある。トニー・ジャクリンやニック・プライス、ニック・ファルド、トム・カイトといった世界的プレーヤーたちだ。最近ではアダム・スコットがしばしば出場している。第1回大会からちょうど50年が経った1977(昭和52)年には米ツアー賞金王経験者で前年の全英オープンチャンピオンでもあるジョニー・ミラーがやって来た。そのミラーはカットラインをクリアできなかったが、頂点に立ったのも海外選手。当時20歳のスペイン人、大ブレーク前のセベ・バレステロスだった。翌年、米ツアー初勝利を手土産に戻って来たバレステロスは大会連覇を達成。その後はスーパースターへの階段を駆け上がっていった。
1977年、1978年と日本オープンゴルフ選手権競技を
連覇したセベ・バレステロス。写真は1977年の表彰式
1980年代から90年代にかけては青木功、尾崎将司、中嶋常幸のAONが大会を席巻する。1983年から94年までの12年間で尾崎と中嶋が4勝、青木が2勝を挙げ、AON以外の優勝は2回だけ。この12年間でAONの2位(タイを含む)ものべ7回あり、3人が日本オープンタイトルをかけて激しく火花を散らした時期だった。
大会は長く関東、関西と中京圏を中心に開催されてきたが、初めて北海道(小樽カントリー倶楽部)で行われた1990(平成2)年から地方での開催が増えていく。翌1991(平成3)年には中国地方(山口県の下関ゴルフ倶楽部)、1997(平成9)年には九州(福岡県の古賀ゴルフ・クラブ)で初めて日本オープンゴルフ選手権競技が実施される。さらに、2004(平成16)年には北陸(石川県の片山津ゴルフ倶楽部白山コース)、2012(平成24)年には沖縄県(那覇ゴルフ倶楽部)でも開催された。
近年はアマチュアの活躍が目立つ。2010(平成22)年に大学1年生の松山英樹が3位タイに入り、2017(平成29)年には大学1年生の金谷拓実が前年賞金王の池田勇太と激しく優勝を争って1打差の2位。第1回大会の赤星六郎以来となるアマチュア優勝に近づいた。そして2022(令和4)年、大学4年生、21歳の蟬川泰果がアマチュアとして95年ぶり2人目の日本オープンチャンピオンに輝いた。この年は大学3年生の杉浦悠太も3位タイに食い込んでいる。
JGA創立100周年の2024(令和6)年の舞台は大会最多8回目の開催となった東京ゴルフ倶楽部(駒沢、朝霞時代も含む)。地元埼玉県出身の今平周吾が72ホール目のバーディが決め手となって1打差で大会初優勝を飾った。
文/宮井善一
日本オープンゴルフ選手権競技歴代優勝者一覧
開催年 | 優勝者 | Score | 開催コース | Yards | Par |
---|---|---|---|---|---|
1927 | @赤星 六郎 | 309(+29) | 程ヶ谷CC | 6170 | 70 |
1928 | 浅見 緑蔵 | 301 | 東京GC(駒沢) | 6160 | |
1929 | 宮本 留吉 | 298(+10) | 茨木CC東C | 6300 | 72 |
1930 | 宮本 留吉 | 287(-1) | 茨木CC東C | 6300 | 72 |
1931 | 浅見 緑蔵 | 281(+1) | 程ヶ谷CC | 6170 | 70 |
1932 | 宮本 留吉 | 298(+10) | 茨木CC東C | 72 | |
1933 | 中村 兼吉 | 294(-2) | 霞ヶ関CC東C | 6700 | 74 |
1934 | 関西風水害のため中止 | ||||
1935 | 宮本 留吉 | 296(0) | 東京GC(朝霞) | 6700 | 74 |
1936 | 宮本 留吉 | 293(+13) | 鳴尾GC | 6704 | 70 |
1937 | 陳 清水 | 284(-8) | 相模CC | 6640 | 73 |
1938 | 林 萬福 | 294(+2) | 藤澤CC | 73 | |
1939 | 戸田 藤一郎 | 287(-1) | 廣野GC | 72 | |
1940 | 宮本 留吉 | 285(-11) | 東京GC(朝霞) | 74 | |
1941 | 延 徳春 | 290(+2) | 程ヶ谷CC | 6667 | 72 |
1942~49年は第二次世界大戦のため中止 | |||||
1950 | 林 由郎 | 288 | 我孫子GC | ||
1951 | 小野 光一 | 288(0) | 鳴尾GC | 72 | |
1952 | 中村 寅吉 | 279(-9) | 川奈ホテルGC富士C | 6691 | 72 |
1953 | 小野 光一 | 291(+11) | 宝塚GC旧C | 6516 | 70 |
1954 | 林 由郎 | 293(+5) | 東京GC | 6740 | 72 |
1955 | 小野 光一 | 291(+3) | 廣野GC | 6770 | 72 |
1956 | 中村 寅吉 | 285(-3) | 霞ヶ関CC西C | 6650 | 72 |
1957 | 小針 春芳 | 288(-8) | 愛知CC | 7055 | 74 |
1958 | 中村 寅吉 | 288(0) | 鷹之台CC | 7100 | 72 |
1959 | ☆陳 清波 | 296(0) | 相模原GC東C | 7255 | 74 |
1960 | 小針 春芳 | 294(+6) | 廣野GC | 6950 | 72 |
1961 | ☆細石 憲二 | 289(+1) | 鷹之台CC | 7070 | 72 |
1962 | 杉原 輝雄 | 287(-1) | 千葉CC梅郷C | 6940 | 72 |
1963 | 戸田 藤一郎 | 283(-5) | 四日市CC | 6955 | 72 |
1964 | 杉本 英世 | 288(0) | 東京GC | 6726 | 72 |
1965 | 橘田 規 | 284(-4) | 三好CC | 7030 | 72 |
1966 | 佐藤 精一 | 285(-3) | 袖ヶ浦CC袖ヶ浦C | 7075 | 72 |
1967 | 橘田 規 | 282(-6) | 廣野GC | 6970 | 72 |
1968 | 河野 高明 | 284(-4) | 総武CC | 7006 | 72 |
1969 | 杉本 英世 | 284(-4) | 小野GC | 6980 | 72 |
1970 | 橘田 光弘 | 282(-6) | 武蔵CC笹井C | 7010 | 72 |
1971 | ☆藤井 義将 | 282(-14) | 愛知CC | 7105 | 74 |
1972 | 韓 長相 | 278(-10) | 大利根CC東C | 7024 | 72 |
1973 | ベン・アルダ | 278(-10) | 茨木CC西C | 7075 | 72 |
1974 | 尾崎 将司 | 279(-13) | セントラルGC東C | 7136 | 73 |
1975 | 村上 隆 | 278(-10) | 春日井CC東C | 6870 | 72 |
1976 | 島田 幸作 | 288(-4) | セントラルGC東C | 7262 | 73 |
1977 | セベ・バレステロス | 284(0) | 習志野CC | 7119 | 71 |
1978 | ☆セベ・バレステロス | 281(-7) | 横浜CC西C | 6928 | 72 |
1979 | ☆郭 吉雄 | 285(-3) | 日野GCキングC | 7040 | 72 |
1980 | 菊地 勝司 | 296(0) | 相模原GC東C | 7260 | 74 |
1981 | 羽川 豊 | 280(0) | 日本ラインGC東C | 6800 | 70 |
1982 | 矢部 昭 | 277(-7) | 武蔵CC豊岡C | 6678 | 71 |
1983 | ☆青木 功 | 281(-7) | 六甲国際GC | 7075 | 72 |
1984 | 上原 宏一 | 283(-5) | 嵐山CC | 7005 | 72 |
1985 | 中島 常幸 | 285(-3) | 東名古屋CC西C | 6988 | 72 |
1986 | 中島 常幸 | 284(-4) | 戸塚CC西C | 7066 | 72 |
1987 | 青木 功 | 279(-9) | 有馬ロイヤルGC | 7034 | 72 |
1988 | 尾崎 将司 | 288(+4) | 東京GC | 6923 | 71 |
1989 | 尾崎 将司 | 274(-6) | 名古屋GC | 6473 | 70 |
1990 | 中島 常幸 | 281(-7) | 小樽CC | 7119 | 72 |
1991 | ☆中島 常幸 | 290(+2) | 下関GC | 6910 | 72 |
1992 | 尾崎 将司 | 277(-11) | 龍ヶ崎CC | 7012 | 72 |
1993 | 奥田 靖己 | 281(-3) | 琵琶湖CC | 6879 | 71 |
1994 | 尾崎 将司 | 270(-18) | 四日市CC | 7275 | 72 |
1995 | 伊沢 利光 | 277(-7) | 霞ヶ関CC東C | 6995 | 71 |
1996 | ピーター・テラベイネン | 282(-2) | 茨木CC西C | 7017 | 71 |
1997 | クレイグ・パリー | 286(+2) | 古賀GC | 6762 | 71 |
1998 | 田中 秀道 | 283(-5) | 大洗GC | 7160 | 72 |
1999 | 尾崎 直道 | 298(+10) | 小樽CC | 7200 | 72 |
2000 | 尾崎 直道 | 281(-3) | 鷹之台CC | 7034 | 71 |
2001 | 手嶋 多一 | 277(-7) | 東京GC | 6908 | 71 |
2002 | デービッド・スメイル | 271(-9) | 下関GC | 6867 | 70 |
2003 | 深堀 圭一郎 | 276(-8) | 日光CC | 7027 | 71 |
2004 | 谷口 徹 | 285(-3) | 片山津GC白山C | 7104 | 72 |
2005 | 片山 晋呉 | 282(-2) | 廣野GC | 7144 | 71 |
2006 | ポール・シーハン | 277(-7) | 霞ヶ関CC西C | 7068 | 71 |
2007 | 谷口 徹 | 283(-5) | 相模原GC東C | 7259 | 72 |
2008 | 片山 晋呉 | 283(-1) | 古賀GC | 6797 | 71 |
2009 | ☆小田 龍一 | 282(-6) | 武蔵CC豊岡C | 7083 | 72 |
2010 | 金 庚泰 | 271(-13) | 愛知CC | 7084 | 71 |
2011 | ☆裵 相文 | 282(-2) | 鷹之台CC | 7061 | 71 |
2012 | 久保谷 健一 | 292(+8) | 那覇GC | 7176 | 71 |
2013 | 小林 正則 | 274(-10) | 茨城GC東C | 7320 | 71 |
2014 | 池田 勇太 | 270(-10) | 千葉CC梅郷C | 7081 | 70 |
2015 | 小平 智 | 275(-13) | 六甲国際GC東C | 7394 | 72 |
2016 | 松山 英樹 | 275(-5) | 狭山GC | 7208 | 70 |
2017 | 池田 勇太 | 272(-8) | 岐阜関CC東C | 7180 | 70 |
2018 | 稲森 佑貴 | 270(-14) | 横浜CC | 7257 | 71 |
2019 | チャン・キム | 285(+1) | 古賀GC | 6817 | 71 |
2020 | 稲森 佑貴 | 275(-5) | 紫CCすみれC | 7317 | 70 |
2021 | ショーン・ノリス | 265(-19) | 琵琶湖CC | 6986 | 71 |
2022 | @蟬川 泰果 | 270(-10) | 三甲GCジャパンC | 7178 | 70 |
2023 | 岩﨑 亜久竜 | 272(-8) | 茨木CC西C | 7315 | 70 |
2024 | 今平 周吾 | 276(-4) | 東京GC | 7251 | 70 |
☆はプレーオフ @はアマチュア
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