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TOOLS ウッドクラブ

ウッドクラブの呼称の由来

1. ドライバー(1番ウッド):Driver

1700年代から1890年頃まで、このクラブは「プレークラブ(Play Club)」と呼ばれていた。その後、ティーイングエリアから最も遠くへ飛ばす、ロフトの小さいクラブを「ドライバー」と呼ぶ習慣が定着した。 語源は「運ぶ・打ち込む」を意味する「ドライブ(Drive)」に由来する。厳密には、ゴルフにおいて「ドライブ」という言葉を用いるのはティーイングエリアから打つ場合に限られる。かつてはスタートホールで第1打を放つことを「ドライブ・オフ」と呼んだが、現在は「ティー・オフ」が一般的である。

 

2. ブラッシー(2番ウッド): BrashieまたはBrassie

主に芝の上(地面)から直接打つために用いられた。ヘッドの摩耗を防ぐため、ソールに真鍮(しんちゅう/Brass)のプレートを装着したことがその名の由来である。草の密集地を指す「Grassy」と「Brass」の合成語として「ブラッシー(Brassy)」と呼ばれるようになったといわれ、1920年代の中頃には米国で2番ウッドの呼称として定着した。現代では「Brashie」あるいは「Brassie」と表記される。

 

3. スプーン(3番ウッド):Spoon

1800年代の中頃、現在の3番ウッドに相当するクラブは、フェース面が内側に湾曲した「コンケーブ・フェース(凹面)」という独特の形状をしていた。その姿が食卓で用いるスプーンに酷似していたことから、この名が定着したのである。

 かつてはシャフトの長さにより「ロング・スプーン」「ミドル・スプーン」「ショート・スプーン」「バッフィング・スプーン」など4種類以上に分類されており、これらが現代の3番から5番ウッドの役割を担っていた。

 

4. クリーク(4番ウッド):Cleek

クリークはもともとアイアンの名称として誕生した。語源は「カチン」という金属音を意味するゲール語の「Cleike」である。 鍵をかける際の「カチッ」または「カチン」という音に打音が似ていたため、初期は「クリック(Click)」、やがて「Cleke」を経て「クリーク(Cleek)」へと変化した。現在、日本では「5番ウッド=クリーク」という認識が一般的だが、本来は4番ウッドを指す。

 

1935年のマグレガー社のカタログ。NO.4(4番ウッド)はCleekとある

 

5. バッフィ(5番ウッド):Buffy

スプーン類の中で最もロフトが大きく、シャフトが硬い「バッフィング・スプーン」から独立したクラブである。本来、ボールのすぐ後ろの地面を強く叩き、高く飛ばす(to baff)ショットに用いられたことからその名がついた。

 ここで特筆すべきは、歴史的な「呼称のねじれ」である。欧米では5番ウッドを「バッフィ」と呼ぶが、日本では古くから4番ウッドを指す言葉として広まってしまった。

 この不可解な逆転現象について、元JGA用具審査委員会技術顧問の佐藤勲は、「戦前の日本のクラブ史を築いた先達たちが、少ない情報と難解な英語を誤解した結果」¹であると指摘している。情報の乏しかった時代、先人たちが海外の資料を読み解く過程で生じた「読み間違いや、意味の取り違え」が、そのまま日本独自の慣習として定着してしまったのである。

 

 しかし、ここでさらに興味深いのは、当の欧米ではもはや「バッフィ」や「クリーク」といったオールドネームでクラブを呼び合う習慣が完全に失われているという点である。現代でもこうした歴史的な愛称(呼称)を使い続けているのは、世界でも日本だけだという。かつての先達たちが英語を誤解して広まった呼び名が、今や本国を差し置いて日本独自の文化として根付いている事実は、ゴルフ史における非常にユニークな現象といえる。

 

文/井手口香

 

  1. 佐藤勲『私のゴルフ図書館』officeアイ・サトウ、1999年、p.26

参考文献

『私のゴルフ図書館』officeアイ・サトウ、1999年

JIM KAPLAN 『macgregor GOLF HISTORY-CATALOGS』

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